国際レコード産業連盟(IFPI)の発表によると、2016年の世界音楽市場は、対前年比5.9%の成長となっており、これはIFPIが市場調査を始めた1997年以降で最も高い伸び率とのことです。
世界の音楽市場は約1.75兆円(157億ドル)、デジタルが50%に
それでは、詳細を見ていきます。
発表によると、2016年の世界の音楽市場は約1.75兆円(157億ドル)規模に成長しており、2015年度の150億ドルから約5.9%の成長となりました。
2015年自体も世界の音楽市場はプラス成長していますので、1999年以降下がり続けてきた世界の音楽市場は下げ止まり、ようやく再成長をとげるかもしれない兆しがでてきています。
中でも音楽ストリーミングを中心としたデジタルの売上は2015年と比較すると17.7%増え、全体の50%を占める約8698億円(約78億ドル)となりました。
後ほど詳細を書きますが、有料音楽ストリーミングサービスが世界の音楽市場を再成長させる鍵になっていることは確実です。
CDの販売や音楽ダウンロードは急激に減少中
その一方でCDなど物理メディアの売上は対前年比7.6%の減少となり、約6022億円(54億ドル)となりました。
ちなみにですが、先日紹介した通り2016年日本の音楽市場におけるCDなど物理メディアのシェアは金額規模で2457億円でしたので、世界の物理メディア(CD)市場の40%を日本が占めていることになります。
話を戻すと、デジタル音楽が成長している中でも「音楽ダウンロード」の売上は前年比-20.5%となっています。そういえば僕も最近は全く音楽をダウンロードせずに、ほとんどGoogle Play Musicでストリーミングで聴いていますね。
このようにダウンロードが減少している中でもデジタルの売上が伸びているのは、やはり有料音楽ストリーミングサービスです。
有料音楽ストリーミングの売上げは対前年で60.4%も増加
2016年の定額制音楽ストリーミングサービスの有料会員は、全世界で1.12億の規模になっており、売上は前年比60.4%の増加となりました。
ストリーミングサービスの売上は、2012年以降毎年2桁%以上増加していますね。
日本の音楽市場においても音楽ストリーミングサービスは存在感を出してきていますが、中国やインド、メキシコなど様々な国でも同様にストリーミングの売上が増加しています。
一方で、”音楽の価値”に関する格差が残っている
このように長い間マイナス成長であった世界の音楽市場が2年連続プラスに転じている一方で、「音楽の価値」に関する格差の議論が出てきています。
英語版では"Valu Gap"と言われていますが、同じ音楽ストリーミングサービスで音楽が生成されても、YouTubeのようにユーザーがコンテンツを作り出すサービスと、Apple MusicやSpotifyのように企業が有料会員や広告による収益を生み出しているサービスでは、アーティストやレコードが会社に還元されるロイヤリティの差が開きすぎていることを言っています。
IFPIによると、有料会員による売上や広告収益がある音楽配信サービスは約2.1億人のユーザーがー利用しており、音楽業界には約39億ドル(4349億円)も還元しています。
その一方でYouTubeのようにユーザーがコンテンツを作り出す音楽配信サービスは、少なく見積もっても9億人の以上のユーザーが利用しているにも関わらず、音楽業界には5.5億ドル(613億円)しか還元していません。
ユーザー数が多くより音楽を聴かれるサービスにも関わらず還元額が少ないこと、これが"Valu Gap"です。
IFPIは「"Value Gap"は、音楽業界の将来の持続可能性に対する最大の脅威」とも表現していますね。
今後もこの価値の格差は拡大していくと予想されますが、ロイヤリティの計算方法見直しや適正な算出方法などの整備が急務となっています。
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