Apple MusicやGoogle Play Music、LINE MUSICやAWAなど多くの定額制音楽配信サービスがありますが、Spotify(スポティファイ)には他のサービスと比較して決定的な違いが一つあります。
それば、Spotifyは「無料プランのユーザーも楽曲を1曲フルで聴ける」という点です。
「AWA」や「LINE MUSIC」の無料プランでは曲を30秒〜1分30秒ほどしか聴くことができませんし、Apple MusicやAmazon Muisic,YouTube Musicは、そもそも無料では利用することができません。
「なぜSpotify(スポティファイ)は無料でも曲をフルで聴けるのか?」
今回は、そんなSpotifyの仕組みやビジネスモデルについて書いていきます。
スポティファイはなぜ無料で音楽が聞けるのか?
結論から書くと、Spotify(スポティファイ)の無料プランには広告が流れますが、その広告収益をアーティストに還元しているため、我々ユーザーは無料で音楽を聞くことができています。
現状Spotifyは、月額980円のプレミアムプランと「広告付きの無料プラン」の2種類を提供しており、プレミアムプランは月額モデルなので当然収益が成り立ちますが、無料プランでもこの「広告付き」というビジネスモデルにより、「無料でも音楽をフルで聴ける」サービスになっています。
Spotifyでは無料プランのユーザーにも15秒から30秒のスポンサー動画(広告)を見せることで、30分間広告無しで音楽を聴くことができる機能を提供しています。
楽曲を配信しているアーティストも、この広告により得た収益をライセンス利用料として還元してもらえるので、無料ユーザー向けにも音楽をフルで提供できているというわけです。
一方有料プランでは、広告は表示されません。
Spotifyの無料プランと有料プランの違いまとめ
詳細は次の記事でも紹介していますが、ここでは簡単にSpotify(スポティファイ)の無料プランと有料プランでできることの違いや制限を一覧表にして紹介していきます。
こうやってみると意外と無料プランでも色々なことができるんですよね。
内容 | 無料(Free) | 有料(Premium) |
---|---|---|
料金体系 | 0円 | 980円/月額 |
曲数 | 7000万曲以上 | 7000万曲以上 |
曲を指定して再生 | X ※1 | ○ |
曲のスキップ | 1時間に最大6回※2 | 無制限 |
歌詞表示 | ○ | ○ |
プレイリスト作成・再生 | ○ | ○ |
音質 | 自動・標準・高音質 | 自動・標準・高音質・最高品質(320kbps) |
オフライン再生(ダウンロード) | X | ○ |
バックグラウンド再生 | ○ | ○ |
広告表示 | 有り | 無し |
※1 PCやタブレットで利用する場合は、30日ごとに15時間だけ広告入りのオンデマンド再生が可能です。
※2 PC版に制限はありません。
「広告付き無料プラン」は、ビジネスモデルとして成立しているのか?
ここまで読んでいただいた方であれば、「Spotifyが、なぜ無料で音楽を聞けるのかは分かった。じゃあApple MusicやLINE MUSICなど、競合の音楽ストリーミングサービスも同じように広告付き無料モデルを提供すればよいのに」と、感じるかもしれません。
なぜ競合の定額制音楽配信サービスは、無料で1曲フルで聴ける機能を提供しないのでしょうか。
そこにはいくつかの理由がありますが、「果たして広告付き無料プランは、ビジネスモデルとして成立しているのか?」という大きな課題がある為です。
少し技術的な話になりますが、Spotifyのようなサービスを提供するにあたっては音楽を配信する為に必要な配信サーバーやデータを保管しておくサーバーなど、システムを維持する為にも莫大なコストがかかります。
アーティストに対するライセンス利用料の還元は「広告収益」から賄うことが可能ですが、サーバー維持費だけでなくスタッフなどの人件費といった固定コストまで広告収益でカバーできているのかは疑問が残ります。
実際のところ、なんと、Spotifyが営業利益ベースで黒字化したのは2021年になってからです。そして純利益ベースでは未だに赤字という状態です。
Spotifyは、Apple MusicやAmazon Music、YouTube Musicといった競合サービスに競り勝ち、音楽配信サービスの市場シェアで1位を獲得し、2021年度第4四半期(12月31日締め)にはユーザー数が約4億600万人に達し、そのうち有料会員数は1億8000万人とのことです。
裏を返せば2億人強のユーザーは無料プランで利用しており、プレミアムプランのユーザーから得る収益を含めても、無料プランのユーザーに費やすコストを回収できていないのでは?と疑問が残ります。
そして実際のところ、Spotifyの開示している情報から以下のような実態となっています。
新規の有料会員であれば約1年3カ月、無料会員に至っては実に約38.8年も継続して利用してくれないかぎり、顧客1人あたりの獲得にかかる費用を回収できない
定額制音楽配信・ストリーミングサービスのビジネス市場は、Google、Apple,Amazon、Spotifyという巨人たちがひしめき合うレッドオーシャンとなっていますが、果たして、Spotifyは今後もこのビジネスモデルを提供し続け、無料で音楽を聞き続けることができるのでしょうか。
とはいえ僕たちユーザーからすると「広告付きでも無料で1曲フルに聴ける」というサービスは、非常に有難いことでもあります。
やっぱり曲が途中で切れたりするのは嫌ですからね。(そもそも、有料プランに入れという話は無しで)