米Billboardや複数のメディアによると、Appleは自信が手がけるApple Musicなどの定額制音楽配信サービスに関して、アーティストやレコード会社に支払うロイヤリティの見直しを政府に提案しているようです。
音楽配信のカタチが「ダウンロードからストリーミング」に、そして「無料から有料に」変わっていく流れにあわせて、動き出したということでしょうか。
ロイヤリティ計算の簡素化
Billboardの報道によると、現在の米国におけるロイヤリティは、相当複雑な計算式によって決められているようで、収益全体の10.5%〜12%をアーティストやレコード会社などのパブリッシャーに支払うように取り決められています。
今回、具体的なAppleの提案内容は公開されていませんが、この計算式を簡素化し、楽曲のストリーミング再生100回に対し、9.1セント(日本円で約10円/紹介時点)のロイヤリティを支払うべきとしています。こので9.1セントというロイヤリティ金額は、現在1ダウンロードの音楽配信ロイヤリティに定められていますので、「100ストリーミング=1ダウンロード」とみなす考えからきているようです。
Spotifyなど無料モデルのサービスは不利に?
今回の見直し提案によって、SpotifyやYouTubeなどの広告型無料モデルは、ロイヤリティの支払いによって不利になるかもしれません。
現在の計算では「収益全体の10.5%〜12%」となっていますので、極端な話、これまではYouTubeで何億回楽曲が再生されようが、広告収益で入ってくる金額に対してロイヤリティを支払うだけでした。
それが「再生数に対して支払う」となれば、「広告収益が全く出ていないのに再生数だけ増えて、ロイヤリティの額が跳ね上がる」なんとことが出てくるリスクがあります。
確かにアーティストやレコード会社にとっては、YouTubeなどで無料で何度音楽を聞かれても少ない金額しか入ってこない現在の計算式よりは、再生数に対して価値が分配される今回の提案モデルの方が良いかもしれませんが、SpotifyやYouTubeなどは今回の提案に反発しそうです。
ダウンロード数とストリーミング再生数の正当な価値は?
また、僕が気になるもう一点は、この「100ストリーミング=1ダウンロード」という価値の考え方ですが、そもそも適正なのでしょうか?
アメリカのレコード協会(RIAA)は、楽曲のゴールドディスク認定に関して、2013年から「100ストリーミング=1ダウンロード」と定義していましたが、今年の初め、「150ストリーミング=1ダウンロード」と数字の見直しを発表しました。
これは音楽配信がダウンロードからストリーミングに変わっていく中での見直しですが、今後もさらに「200ストリーミング・・300ストリーミング・・」と変わっていくかもしれません。
どのようなロイヤリティの計算が最も良いのか僕には想像もつきませんが、今後もストリーミングが主流になる流れは変わらないと思いますので、そのうち「500ストリーミングで9.1セント」といったような計算になるかもしれません。
冒頭にも書きましたが、音楽配信のカタチが「ダウンロードからストリーミング」に、そして「無料から有料に」変わるにつれて、「音楽の価値」「正当なロイヤリティ」という問題は今後も議論が続くと思いますので、追いかけていこうと思います。
Apple Proposes Simplified Statutory Licensing Scheme to D.C.
Apple proposes simpler system for paying song royalties in the US