株式会社フェイスは、マルチカメラ・ライブ動画サービス「VIDEO Clipper(ビデオクリッパー)」を2016年3月16日よりiOSアプリで配信開始すると発表しました。
「VIDEO Clipper」は、コンサートやライブにおいて、実際に会場にいる複数のユーザーが様々な場所からアプリ内カメラで撮影し、リアルタイムで複数の視点での映像が生配信されるサービスになっています。視聴する側は、カメラマンとしてライブ会場から参加しているユーザーが撮影した全ての映像を、自分の好きなアングルに切り替えてライブを視聴することができます。
またプレスリリース内では、サービス開始を記念して、クラムボンが3月17日以降に行う全10公演のライブにて、実際の来場者がライブの一部を「VIDEO Clipper」で撮影・配信することができるコラボレーション企画も予定されています。会場で撮影された映像は、「VIDEO Clipper」アプリを通してリアルタイムで一般に公開され、その後7日間アーカイブもされるとのことです。
素晴らしいサービスだが、気になる点も
かなり面白そうで素晴らしいサービスですね、これ。
プレスリリースにも、
活況が続くライブエンタテインメント市場で、新たなライブの楽しみ方と感動の共有を提供したいという想いから誕生しました。
と、コメントがありますが、まさに新しいライブの楽しみ方だと思いますし、最近は「LINE LIVE」など無料ライブ配信サービスには多くのプレイヤーが登場してきています。
そんな中で「VIDEO Clipper(ビデオクリッパー)」は、会場に参加しているユーザー自身がカメラマンとなり、会場の参加者が見ているアングルを共有できるというサービスなので、新しい視聴体験ができると感じています。
ですが、やっぱり実際のところ気になる点があるのも事実ですね。
著作権など権利の問題
真っ先に気になったのは、権利処理の問題です。
規約を読んだところ、撮影・配信できる映像は「主催者や施設、会場により動画撮影が許可されているものに限ります」となっています。
また配信する音楽の著作権や映像内の肖像権などの権利処理は「全て配信するユーザーが行うこと」と利用規約で規定されています。
さらに配信できる音楽についても「JASRACなどの著作権管理団体で管理されているものに限り、利用した楽曲を報告する義務がある」となっていますね。
まぁ、このあたりはツイキャスなど他のサービスと同じですが、果たしてどこまで守られるのでしょうか。
メジャーなアーティストのライブでは今回のクラムボンのケースのように、主催者が配信をコントロールすることは可能だと思いますが、駆け出しのアーティストやインディーズシーンのライブハウスでは、最近は多くの観客がスマホ片手に動画を撮影しています。
そういった動画撮影を咎めるケースもあまりないので、見た目では動画を撮影しているだけなのか、配信しているのか全く区別がつかないので、このあたりが無法地帯になりそうな気もします。。
実際に権利侵害で第三者から申告があった場合は、「ユーザーと第三者の当事者間で解決すること」となっていますが、解決にもコストがかかりますからね。
まぁ、ここは配信する側のモラルの問題ですが、どうなるでしょうか。
音質の問題
こちらは、サービスのスペックとして気になった点です。
ライブハウスに参加しているユーザーが自分のiPhoneで録音した音を配信することになるので、基本的に配信される音は会場のアンプやスピーカーから出ている、いわゆる「外音」です。
それらをiPhoneで拾って配信するというだけで、どんな音質になるかは残念ながら容易に想像つきますね。。
アンプの目の前とか音割れしまくっていると思いますし、離れすぎていたり周りが騒がしいと配信者の話し声とかしか入っていなかったりするかもしれません。
その点「LINE LIVE」は、ユーザーの配信を許可していないが故に、しっかりとミキサーから音と外音をミックスして配信していました。
このあたりは一長一短なので、どちらが良いとは決め付けられないですが、聴くに耐えられない音だとユーザーも離れていくのではないでしょうか。
ここは実際にライブを視聴して、また感想記事を書こうと思います。
毎度ですが、気になるビジネスモデル
そして毎回こういった無料ライブ配信サービスの話をするときに書いていますが、やっぱり気になるビジネスモデル。
いったい、どうやって収益を生み出すのでしょうか?
現状の規約を見る限り「動画配信内で、視聴者に金品を要求する行為(=乞食行為)は禁止」となっていますし、いわゆる投げ銭のような機能や有料配信のような機能も今のところはありません。
一応サービス規約内に「広告表示されるよ」との記載があったので、無料配信で人を集めて広告で収益を上げるモデルになると思いますが、配信者側も広告収益の一部などもらえるようになるのでしょうか?
実演者(場合によっては配信者)とFaith社の双方、または三者ともに幸せになれないと、なかなか配信する側に収益面でのメリットも出てこないかもしれません。
長々と書いてしまいましたが、こういった新しいサービスは、これまでのライブへの参加方法を大きく変える可能性も秘めていますし、しばらく使ってみようと思います!
Source: