いやー、ブログメディアやっていて良かったです。
以前紹介した邦楽ロックバンド「NINO NINO SAYOCO(にの にの さよこ)」さんですが、縁あってバンドさんとつながれて、今回、2016年2月17日に発売されたフルアルバム「美ちていく狂気」を聴かせていただく機会ができたので、早速レビューしようと思います。
「なんだこの音楽たちは、枠が存在しない」
ですよ。
UNHEL RECORDS (2016-02-17)
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NINO NINO SAYOCO(にの にの さよこ)って?
以前紹介した記事も参考にしていただければと思いますが、このバンドさんの特徴は、アニソン顔負けの200bpmを超える高速8ビートで構成されたロックナンバーに、ネガティブだったり、激しく攻撃的だったりする歌詞を乗せているところです。
踊って騒げるハイスピードの楽曲と共感できる歌詞が魅力的なバンドさんなので、以前の紹介記事も参考にしてみてください。
参考:NINO NINO SAYOCO、音楽と歌詞のギャップが魅力
アルバム「美ちていく狂気」を全曲レビュー
それでは、収録されている11曲の内、間奏曲などの3曲を省いた8曲をレビューしていきます。「ネタバレやめて」って人は、アルバムを聴いてから見てください!
- "美ちていく狂気” ダイジェスト
- 02. 小夜子
とりあえず約244bpmって、邦楽ロックの枠を完全に超えてきてる。曲の出だしからアクセル全開で疾走感溢れているナンバーです。
そして何より驚いたのは、全く予想していなかった完全英語歌詞。紹介したとおり「共感できる歌詞」が魅力のバンドさんだと思っていたので、良い意味で、いきなり予想を裏切られました。
でもバンド名にもついている「小夜子」がタイトルになっているこの曲は、リスナー側が色んなことを想像して聴ける感じですね。僕は、自分が思い描いてた未来とは違うけど、今の自分をもどかしく思いながらも生きていく「小夜子」が歌っているように感じましたよ。
ってか、小夜子って誰なんだろ。気になる。
- 03. バッテリー少女
これぞ、NINO NINO SAYOCOと思えた一曲。
この曲、曲構成や変化・展開が激しいところも印象に残りますが、なんといっても歌詞がヤバい。
いや、ヤバいというか、深い。
バッテリー(電池)のように熱をもって暴走する女の子の感情が、「攻撃的」から「悲しさ」に変わっていく過程を、バッテリーが切れていく様子と重ねながら、歌詞や楽曲で表現しているように感じました。
こういう表現方法が本当にこのバンドさんの特徴だし、僕がオススメしたい魅力です。
ラストの大サビで一回転調を挟むところとかも、電池が残り少なくなると最後に謎の出力があるみたいに、この曲の終わりに最後の勢いみたいなものを感じさせるし、それに続くフェードアウトからのピアノ終わりとか、最後までバッテリーにこだわった表現のように感じました。
歌詞とセットに楽曲を聴いて欲しい一曲で、僕の中で、本アルバム一番のお気に入り。
- 04. 人間失格
最初にバンドを紹介した時に聴いた一曲で、マイナス思考全開のナンバー。
一言で表すと、「○ねよ、もう。」っていう曲。
前も同じこと書いたけど、楽曲自体はかなりキャッチーでノリが良い。ギターサウンドとかもカッコイイし、聴きやすい。そんなナンバーだけど、誰もが一度は感じるようなネガティブな歌詞を組み合わせることで、曲と歌詞のギャップが魅力になっている一曲です。
- 05. アンヘルシーアイドル
こちらも以前紹介した一曲で、バンドさんの存在を知ったナンバー。
やはり約225bpmと高速のロックナンバーで、途中でスクリームっぽいシャウトなども入る少しラウドな一曲。
今回、歌詞カードを見ながら改めて聴いたけど、すごく作りこまれた歌詞だと改めて思った。色んなところで韻を踏んでいたり、同じ言葉を順序を入れ替えて使ったりと、面白い展開になっている。前回は気づけなかったことに反省。
「ハイ」と「灰」という言葉が何度も出てくるけど、毎回違う文脈で登場しているのも歌詞カードを見て気づいた。
なんかTwitterで見かけたけど、大森靖子さんのこと歌った一曲らしい、納得。
- 06. gigi
この曲は、また違った魅力を感じた一曲です。
始まりは「普通のロックナンバー」なんだけど、他の曲ではあまり聴けない、楽器隊が前に出てくる構成になっています。
1番終わりに入ってくるギター&ベースのユニゾンからピアノ&ボーカルのユニゾンにつながる部分や、そこからのスラップソロ、ドラムソロ、ギターソロと楽器隊がアピールしまっくている部分は、他の曲ではあまり聴けない展開だと思う。
そして、後半のエレクトロ展開も全く想像していなかったので新鮮だ。シンプルに4拍子を刻んだ後、最後にはしっかりと「普通のロックナンバー」に戻ってくるあたりも、やっぱり外さない。
僕の中では、アルバム内で1,2位に入る良曲。
- 08. ばいばいミッチェル
これまた意外性の一曲。なんだこのシンプルな曲は。
「どうしたNINO NINO SAYOCO、正統派すぎるじゃないか」と。
ギターとピアノを使ったイントロ、ブリッジミュートで攻めるAメロにピアノを加える、そのままサビを駆け抜ける、そして間奏入れて2番に入るなんて、曲の構成も王道展開の良い曲すぎるじゃないか。
「どこかで変わるかな?」と思って聴いていても、2番が終わって、ギターソロの間奏を入れて、一旦落としてから大サビに入るという王道の展開です。
最後まで普通に良い曲だ。
でも僕は、「俺たち、こういう曲もできるんだよ」というメッセージを勝手に感じました。
後でも書きますが、こういう展開の曲を、interlude後のアルバム8曲目に入れてきている点とかも、バンドさんの強いこだわりだと思います。
- 09. ビビアン・ビビダン
いつものNINO NINO SAYOCOが戻ってきました。
正直にいうと、最初は複雑すぎる曲展開や歌詞に全くついていけないくらいでした。でも、「複雑」ってのは、このバンドさんにとっての褒め言葉であり、魅力が出ている一曲だと感じています。
基本的に使っているコード数は少ないのに、音数が多く音圧が出ているので複雑な構成に感じたのかな。その中で急に入ってくるサビにあたる部分を、少しジャジーな雰囲気だったりパンクロックに弾いてみたりで、最初は僕の理解が追いつかなかったんだと思ってます。
ボーカルのメロディがはっきりしているサビ部分と、その他部分のボーカルにギャップがあり過ぎるところも複雑に感じさせる要因かもしれないけど、聴けば聴くほど、うん、中毒性が高い。
- 11. 憂ちゃん
アルバムの最後に余韻を持たせるような一曲。
実はこの曲の前に感想曲として「優ちゃん」なるナンバーが入っています。それも2分半の長めのピアノソロになっています。この2曲、敢えて分けた意図があるのでしょうが、僕は「優ちゃん」と「憂ちゃん」、続いている一曲だと受け取ってます。
「優ちゃん」は終始優しいピアノが続きますが、同じように優しいピアノから始まる「憂ちゃん」は、どんどん曲に激しさを出してくるし、歌詞も悩ましい内容になっていく。
優しい「優ちゃん」が、どんどん悩んで「憂ちゃん」になっていく様子を音楽と歌詞で表現していて、最後までその悩ましさが解決せず曲が終わるあたりに、アルバムラストにふさわしい余韻を感じた。
次回作に続くって感じです。
アルバムを通して聴くことで
いかがでしょうか。
以上8曲と、全曲レビューからは省いたけど、1曲目にintroとして「room」、7曲目と10曲目にinterlude(間奏曲)として「scribbles」「優ちゃん」が収録された、全11曲構成のフルアルバムになっています。
少しバンドマン目線の話しになってしまうけど、僕の経験上、フルアルバムを作る時は曲順を考えるのが一番楽しいです。どういう流れで聞いてもらおうかと、あーでもない、こーでもないと考えていました。ライブのセットリストとかも同じですね。
今回聴いた「美ちていく狂気」は、いきなり予想を裏切る曲を最初に持ってきて、次にバンドらしさ全開の曲を置く、その後、中盤ではバンドの原点とも言える定番の曲を立て続けに流し、間奏曲を挟んだ後に全く違う色の曲を出してから、一気に攻めて最後は余韻を持たせて終わるという、とても聴きやすい流れだったと僕は感じています。
しかし、こうやって文字で書いていて気づきましたが、実は「人間失格」とか「アンヘルシーアイドル」が、NINO NINO SAYOCOさんらしい曲ではないのかもしれないです。僕はこの2曲でバンドさんを知ったので、「定番の」とか「らしさ」とかいう言葉で書いてますけど、「小夜子」とか「ばいばいミッチェル」も良い曲です。
たまたま僕が魅かれたのが「人間失格」などの色を継いだ「バッテリー少女」や「gigi」だっただけなので、聴く人によって色んな魅力が溢れているアルバムだと思ってます。
以上、かなり長文になってしまったけど、聴いて損はない1枚ですよ!各レコード店やAmazonでも絶賛発売中です!
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